■循環器内科・不整脈グループの特徴■
循環器内科の特徴は、一般的な虚血性心疾患や弁膜症、不整脈の治療を中心に、睡眠時無呼吸症候群や肺高血圧症など様々な循環器疾患グループがあり、それぞれ専門性に特化したグループで形成されています。横のつながりが非常に深いので、グループの垣根を越えて、1人の患者さんを複数のグループで診ることも可能です。
不整脈グループは、カテーテルアブレーションをはじめとする心房細動の治療を中心に行っていますが、それ以外にも薬物治療やデバイス治療、血栓予防のための左心耳閉鎖術など、そういった全ての不整脈治療を、4人の専門医で行っています。また当グループで特徴的なのは、デバイスナースというデバイス専門の看護師や診療看護師、臨床工学技士が不整脈専門でいることです。このコメディカルの皆さんと医師がフラットに意見交換しながら、診療の質を高めています。
また、多くの施設ではカテーテルアブレーション専門、ペースメーカー専門、植え込み型デバイス専門のチームといった形で先生が分かれていることが多いのですが、当科では誰でも全てできるようにするという方針で診療を行っています。患者さんからどのデバイスの相談を受けても担当医で対応できる、これも多くの患者さんが集まる理由の一つかもしれません。
■患者背景や心電計の特長を考慮したデバイスの使い分け■
不整脈症状が日々起きているような患者さんであれば、24時間ホルター検査で十分イベントを検出できると思います。ただ、症状がたまにしか起きない、あるいは無症候性の患者さんの場合、心電図は長時間測定すればするほどイベント検出率が上がっていきますので、長時間心電図検査が有用と考えます。
当初は、2週間のパッチ型ホルター心電計を採用していたのですが、当時は2週間分の心電図の読影を院内の技師が1人で行っており、かつ作成した解析レポートはまだスキャンをしてシステムに取り込める状態ではなかったため、紙でプリントアウトされた非常に分厚いレポートを外来の間に見るという運用をしていました。また、2週間の検査でのってくるノイズをカットする作業も必要でした。こういった作業の手間を少しでも減らしたいと考え、1週間の心電図計測が可能なHeartnote®とAIで長時間心電図の自動解析を行うSmartRobinが組み合わされたサービス、AF Detectorを導入しました。
長時間心電図検査は、心房細動のように発作的にイベントが起きる方や無症候の方を対象に行っていますが、本当に心房細動がないということを証明するためにも適していると考えます。例えば、アブレーション実施から3、6、12カ月後に24時間ホルター心電図検査を行っていたのですが、1日不整脈がないという状況だけで本当に抗凝固薬や抗不整脈薬を止めて良いのか、次のステップ・治療に迷うことがあります。一方、1週間計測して心房細動発生率が0%となれば、しばらく発作は起きていないのだろうと判断できますし、患者さんにとっての信憑性も違ってくるでしょう。また、失神を繰り返す方や、長期間でたまにしか発作が起きない方には、植え込み型心電計も選択肢として考えます。
■生理検査室との長時間心電図検査の運用■
当院では、現状長時間心電計の検査枠を一日2枠と決めて運用しています。ただ、患者さんの中には今めまいや動悸といった症状が出ていて、今日検査をしなければ発作イベントを捉えられないかもしれない方がいらっしゃいます。不整脈は症状が出ている期間に検査する方が検出されやすいので、そういった方に外来予約で1カ月後に検査、では遅いです。このような場合は、緊急枠として検査室に連絡して、その日に心電計を取り付けて帰っていただくこともあります。
AF Detectorサービスは、病院に在庫を置いておくことができ、検査したいときにすぐに検査できるサービスなので、当日検査したい場合に対応可能で、かつ心電計を取り付けた後、患者さんご自身でデバイスを外して郵送できますので、遠方からきた患者さんにとっては再来院が不要で実施しやすい検査だと思います。
■電子カルテ×検査システム×SmartRobinの連携でシームレスな診療を実現■
現在、長時間心電計はHeartnote®を使用していますが、24時間ホルター心電計など他の心電計は他メーカーの製品を導入しており、それらの検査結果は当メーカーの検査システムを通じて電子カルテと連携され、確認できるようになっています。つまり、当院では電子カルテと心電図検査の結果を同じパソコンで見ることができるようになっています。そのためAF Detectorを導入する際、SmartRobinで解析したレポートもこの検査システムを活用して見られるようにしたいと思いました。そのためには、検査システムとSmartRobinを連携させる必要がありました。
当初は、我々医療スタッフと臨床検査部で話を進め、紙の解析レポートを院内で印刷して取得するところまではできました。しかし、解析レポートを自動で該当患者さんに紐づけ、電子カルテ上で解析レポートを確認するところまではできませんでした。その後、検査システムを提供いただいているメーカーとカルディオインテリジェンス社と当院の3者で話し合いを進め、検査システムを通じて電子カルテに連携できるかもしれないとのことでシステム改修が始まりました。
もう一つのハードルは個人情報、いわゆるどのオーダーがどの患者さんかを紐づける必要がありました。もちろん、医療機器メーカー側には患者さんの個人情報がわからないようにしなければなりません。そのため、院内の情報センターにも意見を聞き、結果的に検査システムのオーダー番号とSmartRobinの識別番号を紐づけることで、SmartRobinの解析結果を電子カルテから呼び出して、同じパソコン画面で見ることができています(図)。
当院の大きな特徴の1つとして、ネット環境を院内で使用する電子カルテと同じパソコンで立ち上げることができます。ですので、例えば解析レポートを見て、本当に心房細動なのかどうか実際の波形を見て確認したい時に、電子カルテと同じパソコンでSmartRobinのアプリを立ち上げて目の前の患者さんと一緒に波形を見ながら確認することもできます。なので、わざわざ別のパソコンを立ち上げたり、医局に戻って後で調べたりといった手間もないわけです。患者さんに波形を見せながら説明すると説得力が増しますし、非常に良い活用ができていると思います。
図:順天堂医院におけるシステム全体像
■レポートとアプリ画面を組み合わせたSmartRobinの活用と今後の期待■
SmartRobinは心房細動検出に特化した長時間心電図解析ソフトウェアということで、心房細動の検出に関しては絶大な信頼感、安心感があります。ただ我々は不整脈医ですので、診ているのは心房細動の患者さんだけではありません。なので、心房細動以外の不整脈や失神の原因精査、徐脈イベントも同じようにAIで検出できたら良いなと思います。
先日一例、心房細動の精査目的でSmartRobinによる心電図解析を行ったところ、結果としては心房細動発症率が0%となっていたのですが、突発的に頻脈になっていたところを実際のアプリ画面で確認してみると、発作性上室性頻拍が見つかりました。
このように、レポートと実際の波形画面を組み合わせて、診断に活用しているケースもありましたので、今後のさらなる開発に期待したいと思います。