■仙台厚生病院 循環器内科・不整脈科の特徴■
循環器内科・不整脈科では、狭心症や心筋梗塞など心臓の血管疾患を専門に扱う虚血チーム、足など心臓以外の血管を診る末梢血管チーム、弁膜症や先天性に心臓内に穴があるシャント性疾患を診る構造的心疾患(SHD)チーム、エコー検査や重症心不全を専門とするチーム、そして不整脈診療を専門に行う私たち不整脈チームで構成されています。PCI(経皮的冠動脈インターベンション)は年間1000件以上の症例がありますが、特に急性冠症候群が500例/年と約半数を占めているのが特徴です。末梢血管治療は年間400例、弁膜症へのカテーテル治療はTAVR(経皮的大動脈弁置換術)が年間300例、僧帽弁クリップ術が年間80例、不整脈では年間750件のカテーテルアブレーション、60件のICD/CRT(植え込み型除細動器/心臓再同期療法)があり、国内有数の症例数を誇っています。東北で循環器分野の“最後の砦”となるような志を持って診療にあたっています。
■ホルター心電図検査の実施状況■
私が診る患者さんは、かかりつけの医師によって不整脈が診断され、アブレーション治療の相談に来る方が大半です。そのため、ホルター心電図検査の実施目的は主にアブレーション治療後の再発の有無の確認が多いです。現在、一般的な24時間測定ホルター心電計と7日間測定が可能なパッチ型心電計を使い分けています。パッチ型心電計の運用としては、当院でパッチ型心電計を装着後、患者さんがご自宅で7日間過ごした後に取り外し、検査機器をレターパックで郵送し、その後結果を報告する流れとなっています。そのため、ホルター心電図や一般的な長時間心電図検査のように機器を外すために患者さんが再来院する必要がないというメリットがあります。以前は別の長時間心電図検査器を使用していましたが、運用の不便さを感じ、現在全例でパッチ型心電計に切り替えています。長時間心電図は魅力的なデバイスですが、一人の患者さんに装着すると同時期に他の患者さんには使用できないというデメリットがあります。その点、パッチ型心電計はディスポーザブルタイプで、在庫を持つことにより、検査を希望する際にすぐ患者さんに装着でき、順番待ちが不要というメリットがあります。また、病院の特徴として医療圏が広く、患者さんによっては宮城県内から車で2時間かかる方もおり、隣接する岩手、山形、福島などの県外から診療に来る患者さんも多いです。遠方の患者さんには、前述のように来院する必要がないパッチ型心電計を使用しています。
検査後の解析については、24時間ホルター心電図は個々の医師が行っていますが、7日間のパッチ型心電図についてはSmartRobinを使用して解析を行っています。
■SmartRobin導入前後の運用の変化と役立つ機能■
SmartRobin導入の経緯としては、私自身AI(人工知能)の解析精度や解析ロジックに興味があり、実臨床での使用を望んでいました。導入後は、私たちが見逃しやすいAF(心房細動)をAIが正確に検出するケースを確認できるようになりましたし、AFではないにもかかわらずAFと判断される偽陽性のケースや、AFであるにも関わらず体動ノイズの影響でAFと判断されない偽陰性のケースもあります。もちろん、出てきた結果だけを診療に用いることはなく、診療支援ツールとして医師が最終診断を下すために非常に役立っています。当科では、ホルター心電図検査を月に約200件実施しており、そのうちパッチ型心電計を使用した検査は、SmartRobin導入前は月に5~6件程度でしたが、導入後は月に10~15件程度に増えています。長時間心電図検査の院内フローとしては、SmartRobin導入前は全て私が自分のパソコンで解析を行い、カルテに所見メモを残していましたが、非常に時間がかかっていました。導入後はサマリーページをカルテで確認できるようにし、気になる所見に関しては主治医がパソコン画面上で心電図波形を確認するようにしています。AFの確認に関しても、AIが選出したAF代表波形をクリックすると、即座に該当する波形が表示されるため、以前よりも読影が容易になっています(図)。実際に7日間の検査では、結果を受け取ってから10分程度で診断に至ることができ、時間の短縮と業務効率の向上に貢献しています。また、私が常に注意しているのはAFの始まりと終わりの部分で、そのような部分もAIが正確に捉えているため、非常に有用だと確信しています。前述した偽陽性、偽陰性はゼロではありませんが、誘導が不十分なこと、体動による筋電図の影響があること、パッチの貼り付けが不十分で心電図波形が十分な精度を持たないことが主な原因であると考えられます。
その他SmartRobinの役立つ機能としては、7日間などの2日以上にわたる検査の場合、日ごとの検査結果をクリックするだけで画面を切り替えて表示できることが便利です。例えば、全検査期間におけるAFの負担が7%だった場合、何日目にどの程度発生していたかをすぐに確認できるため、役立っています。AFの総負担も重要ですが、どの程度AFが持続しているかも認識する必要があります。また、ホルター心電図の解析時も同様に、心拍数トレンドグラフをよく活用しています。AF代表波形以外にも、トレンドグラフ上で気になる箇所をクリックすれば、該当の波形がすぐに表示され、その他の頻脈性不整脈の確認にも役立っています。
【図:SmartRobinの役立つ機能】
■SmartRobinへの今後の期待■
SmartRobinはAF検出に特化したツールですが、当院では前述の通り、虚血性心疾患の患者さんも多く、患者さんによっては狭心症の症状が動悸や息切れとして現れることもあり、心拍数に応じたST変化も自動で検出できるようになれば、診療の質の向上につながるツールになると確信しています。また、SmartRobinは開業医の先生方、特に循環器内科を専門としていない先生にとって有用なツールだと思われます。非専門医の先生方にとっては、ホルター心電図の読影が難しいことがあり、実際に私がクリニックで外来診療していた時、ホルター心電図の読影を依頼されることが多かったです。読影を外部に依頼するとコストがかかり、ホルター心電計を購入すると減価償却が必要になるため、自施設で長時間心電図検査を実施するハードルは高くなります。その点でSmartRobinは、使い捨て可能なパッチ型心電計と組み合わせて使用でき、AFの解析はAIによって行えるため、長時間心電図を購入する必要がなく、経済的な心配も少ないと考えられます。さらに、SmartRobinはネットワーク上で運用されるサービスです。将来的には、開業医の先生方に検査をしていただき、専門医と共有して患者さんの検査結果をアプリ画面やレポートで診断するなど、病診連携ツールとして活用できると思います。私たちも遠方の患者さんを診ることがありますので、患者さんが住む地域の開業医の先生に検査を依頼できれば、患者さんの通院の負担を減らすことができると考えています。